トラックボール付きキーボードKeyball46 ~発売までの話~

トラックボール付きキーボードKeyball46 ~発売までの話~

こんにちは。Yowkeesです。
この記事は、「キーボード #2 Advent Calendar 2021」の21日目の記事です。

 昨日の記事はjigya♧kkumaさんによる「プロダクトを始めたきっかけと伝えたいこと」でした。

 2021年のプライベート時間のほとんどを捧げたKeyball46を発売するまでの活動をまとめます。

 

目次

1.自作キーボードデビュー

2.アイデアを試したくてKeyball初号機作ってみた

3.Keyball46の試作

4.ここまで来たら止めれない!射出成型!

5.Keyball46の販売開始

6.実は実店舗を準備中

 

1.自作キーボードデビュー

デビューについて書くために少々自己紹介を。僕Yowkeesは人生を電気に捧げた回路エンジニアです。1か月間ぶっ続けでオシロスコープの前で高密度基板を手半田なんてザラでしたが、電子回路大好き人なので楽しく(?)仕事してきました。


しかし近年、電化製品生産のほとんどが海外に移ったのと半導体が高性能化したことで、回路設計という仕事そのものが激減しました。そのためここ10年はメカ設計をかじったり、苦手意識のあったソフト業務も経験してきました。

社会情勢により奇しくもオールラウンドエンジニアとなった経歴がキーボード開発に活きるのですが、まだ先の話です。

さて、設計業務を20代・30代と続けてきた2020年8月についに肩が限界を迎えました。重い腰を上げて整体に行くと、肩はすでに末期という事で針を打ってもらい、その後毎月通いました。

肩こりの原因は明らか。

1日8時間以上、職場で支給されているB5ノートPCのキーボード使ってればそりゃダメだと思い、解決策として昔見た左右分離キーボードを思い出しました。ネットで検索してみると、驚くことに既製品がまったくヒットせず。

「なぜ?需要はあるはずなのに・・」とさらにネットサーフィンしてみると原因が分かりました。


キーボードは自分で作る時代になっていたのです。


自キ界に出会っての第一印象は「え!?自分で半田付けするの?めんどくさ!」だったのを覚えています。


まさかこの後、自分でもキーボード設計し、何台も作ることになるとは笑

さて、完成品は売ってないんだから作るしかないと、自作キーボードについていろいろ調べます。実に多くのスイッチやキーキャップがあり迷いますが、条件をロープロファイルに絞れば、すぐに選ぶことが出来ました。

Corne chocolateにKailh純正の茶軸スイッチに純正キーキャップを注文。久しぶりの半田付けでしたがまだまだ腕は鈍っていませんよ~完成!

おーいいじゃんカラムスタッガードはタイピングしやすい!親指キーいいじゃん。確実に肩も楽だよ!と大満足。

よしもう目移りしない!この1台で終わりだよ!と言い残しキーボード沼から出ようとしたところで、とあるアイデアが浮かんでしまったためにキーボード沼に沈み、いばらの道を歩むことになるのでした~。


2.アイデアを試したくてKeyball初号機作ってみた


半年ほど、「Corne chocolate」+「Kensingtonスリムブレードトラックボール」を使っていましたが、ここで左右分離キーボードの弱点に気付きます。
左右分離タイプは小さいので位置が動きやすく、トラックボールからキーボードへ手を戻した時に、ベストな位置に手が行かずミスタイプすることがあります。それが微妙にストレスになってきました。
そこでフッと思いついたのが、親指がトラックボールなら手を離さずにタイピングを続けられるのに、という考えです。

きっとすでにやっている人がいるだろうと調べてみると、ビット・トレード・ワン社より1Uサイズの7mmトラックボールが発売されている事、さらにそれを使って、y_fukuさんが7mmトラックボールをClaw44の親指に搭載する取り組みをされていることを知ります。
お~~いいじゃん!この発売を待てばOK!と思っていたのですが。。実は私、10代から使用している生粋のトラックボーラーでして、、いろんな機種を使った中で1つのセオリーに気づいていました。それは「玉はでかいほど使いやすい!」ということ。


今使っているスリムブレードの55mm玉から、いきなり7mmにダウンかぁ~と考えてしまいます。
55mmとまでは言わないけど、せめて34mm玉が使えないかなと、モンモンとした日々を過ごし、遂に自分で作ってみる決心をします!

やばいダラダラと長文になってますね。。ここからはチャチャっと行きます!

3DCADはけっこう経験あり。Fusion360が3Dプリンターと相性が良いようなので使用します。ただFusion360、最近保存が出来なくなったんですけど、無料版は保存できなくなったのかな?( ノД`)


近所のFab Cafeで3Dプリントしてもらいましたが機械が古くギブアップされてしまいました。



じゃあWEBサービスへ。DMM.makeの3Dプリントサービスへ投げてみます。MJFという材料を選定しましたが、これの出力精度がすごい!感動の出来です。



細部のねじ穴まですごい!



塗装して、早速組みます。



ちょっとスクロール部見てくださいよ。ユニバーサル基板でホイール固定してますよ。これでちゃんと回転するように作っちゃうとか、この人変態ですね笑


できました!既製品のトラックボールをバラして基板を流用していますので、ソフトのことはそれほど考えなくても動きました。



さっそく家で使ってみます。
「うん!予想通り使える!」
「ちょっとトラックボール遠いかなぁ」

3Dプリントまでして作った初自作キーボードの完成に喜びも大きく、大満足の工作となりました。



そしてここでまたしても問題点が・・・これ会社で使って恥ずかしくない?汗

いや、人の目なんて気にするな!と気合を入れ、会社に持ち込みました。
緊張しながらも思い切ってカバンから出してみたところで、TRSケーブルを家に忘れた事に気づきすぐにカバンの中に戻します。
この時心臓バクバク、冷や汗が。ケーブル忘れて救われたかも。。やはり会社で、この規模のキーボード使うのは小心者の僕にはハードルが高すぎました。

 

3.Keyball46の試作


そこで、もっと大人しいデザインで作り直そう。作るなら誰でも組み立てられるキット化して販売したいと考えました。
キット化の大変さを10分の1くらいに過小評価した状態からの無謀な計画が始まりました。

さてまずはセンサー周りの回路を自作してみました。
基板実装(PBCA)は仕事では何度も経験があるので、まあ自信のあるところから~と軽いノリです。
Ki-CADなる無料ソフトの存在には驚きました。電機メーカーでは1ライセンス数十万円の電気CADを使用していましたが、それと遜色ないソフトが無償で使用できるとは・・なんて時代だ!
光学センサーにはPMW3360を選定。理由は通販で買えそうだったからってだけです。それの1.9V電源と信号のレベル変換ICを2個付けて~出来た!



お~けっこう小さめにまとまったじゃないですか。


さてブレッドボードで動作確認しようと思いましたが、まあ、なんかめんどくさい。基板作っちゃったほうが早いか!とKeyball46基板もいきなり作り始めました。
ブレッドボードに回路組むより基板作るほうが早いって、なんて時代だ!!



データ出すと1週間で来ちゃうんだもの



初組み立て中は緊張でアドレナリン出まくりでした。「落ち着け~落ち着け~」とブツブツ言いながらの組み立てでした。

CADで確認してるので、大丈夫だと思うけど、基板ちゃんと付くかな~の瞬間です。



こちらも事前に作っておいた3Dプリントしたボールケース、ちゃんと入るかな~の瞬間です。



初めてのオリジナル自作キーボードの設計でしたが、干渉も回路ミスもなく一発で組めたことがかなり自信になり、販売まで一気に進める決意をしました。
初号機よりかなり大人しくなりました。



さて、ソフトはどうするかとなりまして、GitHubのQMK_firmwareのいろんな自作キーボードのファームウェアを勉強していました。たまたま光学センサー名の「PMW3360」で検索してヒットした、Alexander Tulloh氏作のOddballというとってもかわいいキーボードを発見。

このファームウェアがGNUライセンスで公開されており、こちらを大いに参考にして、とにかくトラックボールが動くレベルのファームウェアが出来、ひとまず安心しました。
ソフトに関しては僕はへっぽこコピペエンジニアですが、ひとまず動いたので、あとは~ソフトに自信ありな方々みんなでブラッシュアップしていこうよ!っていうお力を借りる方針で、ひとまずハードだ!販売開始まで突き進みます。



ようやく会社でKeyball46試作品を使用し始めました。キーボードを眺めてうっとり。パームレスト無しで使用したいのでロープロファイルで組み立てたものを1か月使用して、これなら販売できる!と結論を出しました。

 

4.ここまで来たら止めれない!射出成型!


さて、最後の難関。ボールケースをどうするか?
案としては3つ。
1.基板だけ販売して、STLファイルを公開して購入者に印刷してもらう
2.僕が大量に3Dプリントしてキットに同梱
3.射出成型!大量生産!

普通に考えて1か2をチョイスするところです。普通そうですよ。

しかーし!今後トラックボール付きキーボードという分野が世界的に拡大していく未来を想像してしまってたのです。
もしそうなれば、最初に射出成型の金型を作った人が優勝かなと。マジでそんな事を考えてました。ぶっ飛んでました。

よし金型作ろう!ってツイッターで宣言したところ、すぐにないんさんが食いついてくれました。


射出成型という突っ込んだ取り組みにより、徐々にKeyballへの注目が集まってきてるように感じました。

さて、ここから射出成型金型完成までの流れを熱く語ろうと思ってましたが、無限に記事が長くなりそうですので、その辺りは後日、別記事にまとめたいと思います。


といことで、いきなりですが1回目のトラックボールケース上下、25セットが届きました。


こだわったのは、上下部品がダボとダボ穴で固定される事。Keyball46を逆さまにしてもボールが落下しないこと。


このあたりの穴径やケース形状は経験と勘による一発勝負になります。
ダボとダボ穴の径については金型メーカーからノウハウを聞きたかったのですが、部品形状や材質により調整が必要なのでアドバイスはできないとの事でした。

当初はダボを穴より0.2mm太くするぐらいかなぁ~と思っていましたが、入らない危険があったので0.05mmと控えめにしたところこれがバッチリきました。

また、ボールを保持するケース開口はボールサイズ34mmに対して33mmで試作したところちょっとキツすぎてボールに傷がつきそうだったので、33.3mmにしました。ほどよい力加減でボールがするっとケースに収まり、キーボードを振ってもボールが脱落しないグレイトなケースに仕上がったと思います。


ここまで、今だからこそサラっと書いていますが、試作25セットが届くまではストレスのあまり血便が出ました。汚い話ですみません笑
失敗だったらロレックス買ってすぐに紛失したと思えばいいか~とか自分に言い聞かせてましたが、そんなん思えるかーーい!



表面のなめらかさはさすが国内メーカーといった感じです。予想以上に美しい部品に仕上がりました。

 

5.Keyball46の販売開始


さて、ひとまず手に入った25セットでKeyball46の先行販売を開始しました。
ファームウェアが一応動くレベルのアルファ版であることを条件に、販売予定価格よりはだいぶ安めに10セットだけ販売開始しました。
まったく告知を行っていないにも関わらず4時間ほどで完売できまして、共感いただける方の存在を確認できてホッとしました。

左利きの方にもやさしいKeyball46!!

キー配列が特殊すぎる!というご意見もありましたが、私としては、トラックボールを操作する親指姿勢と左右対称となるように親指キーを配置したくて、このようなキー配置にしています。

親指が左右対称になるの図



ここで書いておかなければいけないのが、先行10台の1つをご購入いただいたKoRoN@香り屋様の多大なるご協力です。


私はソフト知識が乏しいのでわかる範囲でしか書けませんが、KoRoNさんはソフト界のトッププレイヤーであり、キーボードのみでコンピューターを操るVimmerさんでもあります。
当初、Keyball46というデバイスはVim界の方々には嫌われる製品やろなぁ~と思っていました。それがVim界の神様と交流できるきっかけとなるとは超意外な展開でした。


KoRoNさんには、トラックボールの動作を滑らかにするアイデアに始まり、ボール移動量の左右通信やProMicroの左右判定からOLED表示など、僕がちまちまやってたら1年やってもたどり着けなかっただろうという完成度のファームウェアを整備していただきました。ファームの取扱説明書まであり、もう感謝してもしきれません。
その後、どうしてここまでご協力いただけたのかが記事にまとめられており、射出成型というぶっ飛び開発に興味を持っていただけたようです。KoRoNさん以外の方々からもソフトについていろいろなアイデアをいただき、かなりブラッシュアップすることができました。
記事の途中に「金型作った人が優勝」とか変なこと書いてますが、的外れでもなかったのかも知れません。

さて、ハードが準備できました。ソフトもハイレベルなものが準備できました。満を持して遊舎工房さんにて委託販売を開始しました。


自作キーボードという趣味をやっていると、これ欲しい!と思ったキットやキーキャップが【売り切れ】ということが結構あります。せっかく気合入りまくりで開発したKeyball46が売り切れで買えない!という事は、僕的には絶対にやりたくないという想いがあり、部品や基板をバンバン発注して、在庫を潤沢にしました。
欲しいと言っていただける方がいる限り、絶対に在庫を切らさずに提供し続けることをお約束します!



実はKeyball46のファームウェアで、まだ生かし切れていない部分があります。それが左右両方にトラックボールを搭載するダブルボール仕様です。これの販売や、どのようなニーズに対応できるか詰められていません。
そもそも、自作キーボード界隈のリアルな繋がりがコロナ禍により分断されているのが原因です!きっと!

 

6.実は実店舗を準備中


ダブルボール仕様とか、その他keyballシリーズのラインナップを紹介する場を作りたい!
何よりリアルでキーボードの話をいろんな人としたい!という想いが募り、もう、
実店舗開きます!
飛騨高山に!
国内第2号店です!

自作キーボードショップをオープン予定の店舗です↓↓↓



なかなかおしゃれな物件ですよ。実はこの記事も新店舗にて書いています。
1月3日オープン予定で準備中です!ぜひ、いらしてください!

Back to blog

1 comment

ダブルボールは
・右:ポインタ移動
・左:スクロール
にできるのならきっと買います。はんだ付け未経験ですがおぼえます。

tamekunij

Leave a comment

Please note, comments need to be approved before they are published.